国際シンポジウム:平等国家ノルウェーの「サクセスストーリー」

平等国家ノルウェーの「サクセスストーリー」

ノルウェーは自他ともに認める平等先進国である。日本を含めジェンダー平等国際指標ランキング順位の低迷が続く国々は、ノルウェーから学ぶべく、その政策制度の研究を進めている。しかしその一方で、ノルウェーのジェンダー研究者たちは、その「サクセスストーリー」を批判的に検証し、平等主義という国家的理念の裏で見過ごされているひずみに目を向けた分析を進めている。

本シンポジウムでは、ノルウェーと日本のジェンダー研究者の対話から、これからのグローバル社会がめざすべきジェンダー平等のあり方を探る。

 

【日程】2020年11月30日(月)
【時間】17:00~18:30(日本)、9:00~10:30(ノルウェー)
【開催方式】オンライン(Zoomウェビナー):参加申込はこちら
【言語】日本語・英語(同時通訳あり)

【企画】INTPART-IGSプロジェクト(ノルウェーリサーチカウンシル助成)
【主催】お茶の水女子大学ジェンダー研究所グローバル女性リーダー育成研究機構
【後援】ノルウェー大使館


プログラム

司会:仙波由加里(お茶の水女子大学)

開会挨拶(17:00~17:05)
インガ M. W. ニーハマル 駐日ノルウェー大使
佐々木泰子 お茶の水女子大学理事・副学長、グローバル女性リーダー育成研究機構長
基調講演(17:05~17:35)
プリシラ・リングローズ(ノルウェー科学技術大学)
「ノルウェーのジェンダー平等:進展とパラドクス」
休憩(17:35~17:40)
Q&Aに質問を書き込んでください
パネリストによるコメント(17:40~18:00)
戸谷陽子(お茶の水女子大学)
松田デレク(お茶の水女子大学)
討論(18:00~18:28)
 
閉会挨拶(18:28~18:30)
石井クンツ昌子 INTPARTプロジェクトお茶大代表

 

基調講演要旨

ノルウェーのジェンダー平等:進展とパラドクス

プリシラ・リングローズ

「北欧諸国が平等主義であるというイメージは、純粋な観察から生じたのもではない。ほとんどの国家的神話がそうであるように、主要人物たちにより、学術的・政治的文脈の中で入念に再生され続けているのだ。」

シモーヌ・エイブラム(2008)
『ノルウェー神話の再生産:平等主義とノルウェー』(CTTC報告書)より

本基調講演は、ノルウェーのジェンダー平等研究の主要領域である、就労、家族生活、生殖、LGBTQIの課題、国内の少数民族と移民について、エイブラムの議論を念頭に分析する。各領域における最新の議論はどのようなものか?その成果はどういう文脈で意義深いと称賛されるのだろうか?または、エイブラムが指摘するとおり、それらの領域におけるジェンダー平等は、入念に構築された国家的神話を維持するための、学者や政治家による誇張なのだろうか?統計的には、ノルウェーは、国際機関やNGOが発表する報告書において、ジェンダー、平均寿命、国民総所得、ジェンダー・ギャップ、母親への福祉の面において上位にランク付けされている。しかし、これらの統計は、平等に注力することで生じているひび割れを包み隠しているのかもしれない。ジェンダー研究者たちもまた、神話的なジェンダー平等国家モデルの構築の片棒を担いでいるのかもしれない。しかし、ノルウェーのジェンダー研究者たちは、福祉国家が成し遂げたジェンダー平等の成果を概ね認めつつも、その「サクセスストーリー」に疑いの目を向けることを忘れていないのだ。


登壇者紹介

プリシラ・リングローズ

ノルウェー科学技術大学教授(ジェンダー研究)。ジェンダー研究センターおよび学際的文化研究学部所属。新たに到着した若い移民に関する研究プロジェクト「言語、統合、メディア:移住者への多数派統合アプローチ」(ノルウェーリサーチカウンシル助成、2017~2021年)研究代表者。2012~2016年には「〔ジェンダー〕平等の売買:現代ノルウェーにおける移住の女性化とジェンダー平等」(ノルウェーリサーチカウンシル助成)の研究代表者を務めた。ヨーロッパと中東地域での紛争や移住という状況下での、ジェンダー化または人種化された個人と文化の接点に焦点を当てた研究の成果を多く発表している。

 

松田デレク

お茶の水女子大学国際教育センター講師(グローバルリーダーシップ研究所講師兼務)。研究分野は、多文化教育、異文化間理解、移民のルーツとルート、異文化間教育。学部教育時代からこれらの課題の研究に取り組んでおり、在日ペルー人の保護者が直面する課題とそれに対する日本社会側の対応についてなど、関連テーマの論文を発表している。現在は、文化間や国境を移動する子どもの教育支援の再構築を検討するべく、研究プロジェクト「外国人児童生徒の文化変容の実態からみる新たな教育支援」(科研費若手研究、2019~2022年度)を進めている。

 

戸谷陽子

お茶の水女子大学人文科学系教授、ジェンダー研究所長。専門分野はアメリカ文学・演劇(劇作家ガートルード・スタイン、テネシー・ウィリアムズ、サム・シェパード、マリア・アイリーン・フォルネス等)、パフォーマンス研究、文化政策。共著書に『パフォーマンス研究のキーワード:批判的カルチュラル・スタディーズ入門』(高橋雄一郎・鈴木健編、2010)、『境界を越えるアメリカ演劇:オールタナティヴな演劇の理解』(一ノ瀬和夫・外岡尚美編、2001)コロンビア大学大学院在学中に、歌舞伎や能、文楽等日本の伝統芸能や現代演劇のニューヨーク招聘公演のリエゾンとして、また、ニューヨークの前衛演劇作家/演出家のアシスタントとして実践活動に従事した経験をもつ。

 

仙波由加里

お茶の水女子大学ジェンダー研究所特任リサーチフェロー。早稲田大学大学院人間科学研究科博士(人間科学)。特に生殖技術や第三者のかかわる生殖の倫理的問題やジェンダーの問題に関心を持ち、この分野の研究で15年以上の経験を持つ。取得。現在の研究プロジェクトは「諸外国の配偶子ドナーの匿名性と出生者の知る権利の対立への対処に関する研究」(科研費基盤研究C、2018~2020年度)。近年の著作に『血のつながりを越えて:提供精子・提供卵子・養子でできた家族の物語』(2020年)がある。また、日本の大学や看護大学などで、生命倫理やジェンダーの科目講義を担当している。

 

【参加登録】
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